オオアオイトトンボ・ペア集合の不思議


観察結果をまとめた表とコメントはこちら

青森市:じゅんさい沼

2003年8月31日

オオアオイトトンボのペアの集まる場所の風景。矢印が集合する木の位置です。
前にある赤土の場所は以前はうっそうと草が茂る古い池があった。
小さな流れに沿って、同じような環境が100mほど続くが、トンボの集まるのはこの木だけ。
木はコマユミ(ニシキギ科)


夕方になって薄暗くなってから、帰り道のそばにあるじゅんさい沼に立ち寄った。
河川改修で魅力が半減したので、期待しないできてみたが、池の入口付近の
小さな木に驚くほどたくさんのオオアオイトトンボのペアが静かに休んでいた。
写真の右にある木がその木で、その下には小さな流れがある。
左の白く見えるのは改修された川のコンクリート壁。


画像クリックで拡大
不思議なことに休んでいるのは全てペアの連結個体で、同じ姿勢をとっていた。
木全体では25〜30ペアほど群れていたが、これは単に「ねぐら」に集まったんだろうか?
外の場所はどうかと、この流れに沿った同じ種類の木や笹やぶを探したが
見当たらなかった。なぜ、この木にばかり集まったんだろう?


2003年9月2日
8月31日の夕方にあれほどいたオオアオイトトンボだが、今日は
やっと草むらの陰で一頭見ただけだった(左)

夕方になって、再度例の場所にオオアオイトトンボが集まっているかやって来た。
しかし、あの光景は再現されず、2組が休んでいるだけだった。(右)
止まっている姿勢は前と同じで、メスが強く胴を曲げ、オスがゆったり曲げている形だった。

じゅんさい沼ではこれまでオオアオイトトンボは観察されていなかった。環境が変わったせいか?
じゅんさい沼はアオイトトンボとオオアオイトトンボが混在して生息する場所となった。


2003年9月9日
木の近くで、早速ペアを発見。  15時49分


そうっと木に近づいてのぞくと、いましたいました!
もう集まっている。今日は多いぞ。 15時54分
集まる木の名前はコマユミ(ニシキギ科)であることを「あおもり昆虫記」の
Mさんに現場で教えて頂きました。付近にたくさんあります。



ペアの数はどんどん増えて、80を越えてしまった。新記録だ!
今まで止まっていなかった木の場所(部位)にも集まっている。 17時20分
今日は夜も観察してみようとコンビニに弁当を買いに行ってきた(第1回長時間観察)

近くで交尾中の個体を発見。交尾して
から集まるのかな?  17時22分
三連結の個体を発見。
中央に縦に並んだのがそれ。
ペアにオスがくっついたのかな。
一番下がメスだ。17時47分


ペアを解消しても、メスの中には同じ
姿勢のままでいる個体がいる。
19時45分
月明りのある日であることを示す写真。
トンボの集まるコマユミと空の月。
火星も赤くはっきり見えた。19時52分



ペアを解消して、一頭ずつ分かれて木に止まる光景。 20時15分
解消した後は木に広く分散し、近くの草にも止まっていた。


夜中に一頭ずつ静かに休む(眠る?)オオアオイトトンボ(左)。  22時44分 

帰る時に撮った最後の写真(右)。二つ前の写真と同じ所を撮っているが、
写っている4頭のトンボの位置は変わっていない。眠っているんでしょう。 9月10日01時56分

真っ暗闇の中での撮影に苦労した。懐中電灯で照らしてオートフォーカスを決めたが
ピンボケ続出だった。クローズアップ写真は露出オーバーになるので使えなかった。
ストロボがトンボに影響しないかと冷や冷やしながら撮ったが、ちょっと動く個体が
あっただけで、影響は小さいようだった。



2003年9月17日

9月17日は午後1時から1時間ごとに観察を始め、17時には50組のペアが集まったので、
眠りから覚めて飛び立つまでの(翌日の9時まで)観察を行った。(第2回長時間観察)

集まる木(コマユミ)は奥に見える陽の当たっている木の手前にあり、
14時には右に見える草の茂みにペアのアオイトトンボが集まってきた。
(木:ペア1、周囲:ペア16、シングル2)

14時には早々にペア1組が木に止まったが、落ち着かなかった(左)。

15時には木のペアが14組に増えたが(右))、周囲の草むらにはペアが26組
集まっていた。17時には木のペアが50組となった(周囲にはシングル7個体)。
その後、19時にはペアを解消する個体が増え(ペア24組、シングル13)、
21時にはペア3組、シングル45個体となった。
シングル個体はぶらんとぶら下がる睡眠スタイルだった。

翌日の5時40分頃には、眠りから覚めた個体が翅を振るわせ始めた。手前の個体。(左)
6時30分には飛び回る個体が増え(ペア3、シングル22)、
8時にはペア1、シングル4と減少し、集合した個体はほぼ解散した。

ペアの中にはいつまでもペアを解消しない個体が1組あり、(右)
写真のようなスタイルで♀♂とも眠っていた。(5時50分)


9月18日9時には新たに集合したと思われるペアが産卵していた。
写真はコマユミの木に産卵管を刺しているメス。

以上の観察結果とコメントをこちらにまとめた。オオアオイトトンボが木の周囲に集まりだし、ペアで木に止まり、
ペアを解消し、一頭ずつ睡眠し、やがて夜明けとともに離散する様子が判ります。
なお、腰曲型とはメスが強く胴を曲げて輪をつくり、オスがゆるく曲げて止まるスタイルです。

追記
2004年、コマユミの枝の表面を観察したら、凸凹状になっていて、オオアオイトトンボの幼虫が無事ふ化したようです。
2004、2005年、このコマユミを観察したがオオアオイトトンボの集合は見られなかった。
また、付近には100本ほどのコマユミが自生しているが、集まったのはこの木だけだった。