オオアオイトトンボ・ペアの観察結果
A 長時間観察
第1回観察結果 2003年9月9日
時刻
ペアの数
シングルの
個体数
個体数
計
観察メモ
15:50
40
計数せず
80
木から20m以内でペア・シングル観察
16:07
60
〃
120
依然木の周りを飛び回る個体あり
16:35
78
〃
156
ペアは5m以内。シングルは10m以内を飛ぶ
17:05
84
〃
168
木の周りで飛び回るペア・シングル共に減
少。
薄暗い
17:40
87
〃
174
さらに減少
18:05
同じレベル
〃
木の周りで飛ぶ個体あり
18:30
減少
(写真より)
増加
(写真より)
空は白い
19:10
40
30
110
飛ぶシングルあり。シングルはオスが多い
一頭だけのメス観察(胴を強く曲げたまま)
木の周りは真っ暗
時折月明り
19:40
30
35
95
メスもぶら下がる(シングル)
月明りあり
20:10
22
40
84
シングルの止まる場所が木全体に広がる
20:35
8
45
61
ペアのいなかった木のそばの草に
シングル個体止まる
21:05
2
53
57
シングルの♂♀比は同じぐらい
21:35
3
52
58
22:05
2
52
56
22:35
1
52
54
23:05
1
62
63
01:40
0
62
62
依然として静かに木に止まっている
(注)
ペアの数は木(幹・枝・葉)に止まっている数。
シングルの数も同様。但し、ペアを解消してからは草に止まる数を含む。
ペアが多数の場合、木の陰・重なりのため、数え難く多少の誤差がある
第2回観察結果
2003年9月17日〜18日
木の幹・枝・葉
周囲(木の左右10m)
合計
頭数
観察メモ
気温
(℃)
青森市
ペア
シングル
小計
ペア
シングル
小計
時刻
通常型
腰曲型
通常型
腰曲型
通常型
通常型
13:00
0
0
1
0
1
2
2
6
7
晴れ、直射日光が木に当たる
22.9
14:00
1
0
0
0
2
16
2
34
36
薄曇、直射日光なし
23.1
15:00
11
交尾
3
3
1
0
29
26
交尾
2
3
55
84
雲が厚くなった
24.0
16:00
6
34
1
0
81
8
20
36
117
空晴れ渡る
21.9
17:00
4
46
3
0
103
0
7
7
110
空はまだ明るい
21.3
18:00
2
42
3
0
91
0
0
0
91
観察に電灯使用
20.9
19:00
0
24
13
0
61
0
0
0
61
19.6
20:00
0
12
21
5
50
0
0
0
50
19.2
21:00
0
3
41
4
51
0
0
0
51
もやった星空
18.4
22:00
0
0
43
2
45
2
3
7
52
もやった星空
17.5
23:00
0
0
48
2
50
0
12
12
62
晴れた星空、月が昇る
17.3
24:00
1
0
50
2
54
0
6
6
60
木に月光射す。月明り
16.6
2:00
1
0
51
1
54
1
7
9
63
完全な睡眠スタイル
16.2
4:00
1
0
51
0
53
0
8
8
61
月がこうこうと照る
15.5
5:00
1
0
49
0
51
1
6
8
59
明るくなる。電灯使わず計数
15.7
5:43
5:44
1頭翅を震わせる。
2頭飛んで移動
6:00
2
0
48
0
50
2
6
10
60
16.5
6:30
3
0
24
0
30
1
7
9
39
飛び回る個体多くなる
7:00
2
0
17
0
21
0
8
8
29
飛び回って計数困難
17.2
7:30
0
0
7
0
7
0
9
9
16
8:00
1
0
4
0
6
1
16
18
24
薄曇、柔らかい陽射しが当たる
18.8
9:00
1
1
0
0
4
1
6
8
12
産卵行動確認
20.6
(注)
単位:ペアは組数、シングルは頭数
腰曲型:メスが強く胴を曲げて輪をつくり、オスがゆるく曲げて止まるスタイル。
通常型:メスが強く胴を曲げていないスタイル。
夜間の照明:観察には懐中電灯にティシュウ3枚かぶせ、光をやわらげて行った。
観察結果のまとめ
① 13時頃から木の周囲に集まり始め、14時頃から木に集まり始める。
② 腰曲がりスタイルのペアが最も多くなるのは17〜18時頃である。
③ ペアを解消し始める時刻は19時頃である。
④ 集合の約半数がシングルのまま休息(睡眠?)する。
⑤ 木から離れる時刻は翌日の6時30分頃である。
⑥ なぜ一つの木にだけ集まるかは、全く判らない。
⑦ 集まる目的の一つは産卵であるが、その後も木に留まる目的は不明である。
⑧ 9月9日の場合、およそ90ペアが集まったことは、付近に180頭生息していたわけで、
日頃の観察からは信じられない数である。
参 考
「トンボの不思議」新井 裕 著(どうぶつ社、2001)にオオアオイトトンボ・ペアの夜間産卵に関する記載があった。著者の観察では夕方から産卵を始め、0時を過ぎても産卵を続け、朝方になっても少数が産卵をしていたという。「産卵時間の長さでは世界中のトンボの中でもトップクラスで、真夜中に産卵するトンボは6000種類もいる世界のトンボの中でも他に例がないように思う」と述べている。
さらに、特定の枝にだけ多数集まり、集中的に産卵する行動について、仮説として①産卵によって傷ついた樹皮はその傷を治そうとする。②孵化したヤゴは、産卵したときにあけた穴を通って外に脱出する。③穴が治癒作用で塞がれると一大事。④そこで、特定の枝に集団で産卵し、枝の治癒力を弱めようとする。 と述べている(要約しています)。
B ペアの集合と気象の関係
8月31日にオオアオイトトンボのペアの集合を観察して以来10月20日まで15回の観察を行った。
これを基に気象との関係をまとめたのが下表です。
気象データは青森気象台の
電子閲覧室
の観測値を引用
月・日
ペアの数
(最大)
総個体数
シングルを含む
観察時刻
昼の天気概況
夜の天気概況
16時の気温
(湿度)
気温
(最低-最高)
8月30日
晴時々薄曇
曇後雨
22.8 (51)
15.4--24.7
8月31日
25〜30
約
60
16:04
曇一時雨
晴一時曇
21.8 (57)
14.8--22.7
9月1日
曇後一時晴
曇
24.3 (43)
14.7--25.7
9月2日
2
4
17:08
曇
雨一時曇
22.4 (64)
17.3--24.0
9月3日
曇一時雨
薄曇後晴
23.1 (67)
18.0--24.2
9月4日
1
2
16:40
晴
晴時々曇
23.8 (58)
16.3--26.7
9月5日
曇後一時雨
大雨
20.2 (71)
14.2--23.2
9月6日
雨時々曇
曇
17.1 (76)
16.1--19.0
9月7日
28
約
60
16:35
曇
曇
19.8 (67)
15.6--23.2
9月8日
雨一時曇
曇時々雨
雷を伴う
17.9 (90)
16.1--18.4
9月9日
87
約
180
17:40
曇
曇一時晴
22.7 (71)
16.9--23.2
9月14日
曇後晴
晴時々曇
24.7 (67)
19.2--26.3
9月15日
2
5
16:00
晴
快晴
20.5 (50)
13.5--22.9
9月16日
0
0
16:00
快晴
晴
22.3 (60)
10.2--22.4
9月17日
50
103
17:00
薄曇後時々晴
晴後薄曇
21.9 (71)
11.8--24.1
9月18日
曇
曇後雨
22.1 (73)
15.4--23.9
9月19日
雨
曇時々雨
18.7 (90)
16.5--19.6
9月20日
1
3
17:30
薄曇
晴一時曇
18.5 (45)
11.0--21.2
9月28日
曇後一時雨
晴一時曇
18.9 (75)
13.9--23.4
9月29日
0
0
17:00
曇時々雨
雷を伴う
雨時々晴
16.6 (78)
12.4--21.9
9月30日
曇時々雨
後一時晴
晴時々曇
17.2 (63)
12.1--19.0
10月1日
0
0
16:50
曇後一時雨
雨時々曇
15.8 (60)
12.5--20.0
10月5日
5+α
Mさんの観察
10+α
14:50
晴後一時曇
晴時々曇
16.1 (48)
6.9--18.0
10月14日
0
0
17:30
曇一時晴
晴時々曇
13.1 (44)
7.6--15.3
10月17日
0
0
15:40
晴
晴
14.9 (57)
6.0--17.6
10月20日
0
0
14:10
晴
薄曇一時晴
15.3 (39)
7.6--17.8
集合と気象の関係のまとめ
① 多く集合した日の天気は曇りか薄曇であった。(ピンク色の行)
② 多く集合しなかった日の天気には晴れや快晴があった。曇りでも集合のない日があった。
③ 10月5日を最後に集合が観察されなくなった。気温の低下によるものと思われる。